バンリの箱庭

あの世とこの世とその狭間:萬道研究会

【第一の人生】67の章

*登場人物*

・萬里→回想中(最初の旦那の元から息子を連れて家出、夜の街デビューの頃)

・せっちゃん→この頃友達になった同じ歳の子、萬里とはちょっと色が違うファンキー系(一緒に同じ店で夜デビューし、シェアハウスしてる)

 

 

K美から連絡がない間

萬里はせっせと働いていた

 

中やんの所を出て

ずっと車上生活をしていた

その頃

何をするにも一緒で

仲良しだったのは

同じ歳の「せっちゃん」

 

せっちゃんは一人暮らしだったけど

友達になって間もない

 

さすがに

そこに居候することはなかった

 

夜のバイトをしながら

冬の車上生活で

萬里は

インフルエンザにかかってしまった

 

実家に帰ればいいものを・・・

とみんな思うかもしれないが

父親から

子供を産むことも

結婚することも

反対されていたので

意地がある

 

絶対に実家には帰らないし

親に頼る気もない

 

だけど子連れで

車上生活の

インフルエンザはキツイ

 

熱くらいどうにかなるかな?

と若さに任せて

そのまませっちゃんの実家に

遊びに行ったんだけど

熱のせいで倒れてしまった

 

そのまま、治療の間

お世話になることになった

せっちゃんの親御さんは

孫のように

萬里の息子の面倒を見てくれて

とても助かったが

 

今の萬里の生活を心配して

せっちゃんと一緒に

部屋を借りることを勧めた

 

保証人にも

なってくれるということだった

敷金はそれぞれが工面して

半分づつ家賃を払うということで

3LDKのマンションを借りた

 

そこは1階で

お庭もついている

ちょっと家賃はお高いけど

二人でやってけばなんとかなる

 

家電は一人暮らしだった

せっちゃんがほとんど持ってたので

萬里は最初の旦那の家から

必要なものを持ち出して

ちゃんとお布団で寝れる生活になった

 

当時は

インフルエンザに効くという

タミフルリレンザというような

薬がなかったため

風邪薬での治療だったから

1ヶ月くらい微熱のまま

仕事も生活も続けていた

 

よく考えたら

この頃すでに

身体の調子が良い時はなかった

若さと気力で生きていた気がする

 

夜の仕事なので

昼間はゴロゴロしていることが多かった

 

息子と遊びながら

うたた寝することもしょっちゅう

息子はとても気を遣う子だったので

萬里の様子を見て邪魔することなく

大人しく一人で遊んでいることも

多かった

 

せっちゃんは出掛けて留守

その日も萬里はリビングで

息子とゴロゴロしながら遊んでいた

 

気温もちょうど良い感じで

暑くもなく寒くもない頃

心地良くて

いつの間にか眠りに落ちていた

 

薄っすらと目が覚めたか

覚めてないかの曖昧な時に

 

玄関のドアがバタンと

閉まる音が聞こえた

『あ〜、せっちゃんが

帰ってきたのかなぁ〜』

と思い身体はそのまま動かさず

目だけを少し開けた

 

萬里は電気の真下に寝ていたのだけど

その明かりを塞ぐように

萬里の顔を覗き込まれた

 

『あ、せっちゃんおかえり〜』と

心の中で呟き

また目を閉じた

 

頭の中で、目を少し開けた時の

さっきの光景を

もう一度繰り返し思い出す

 

『ん?』

 

さっき

萬里の顔を覗き込んでいたのは

茶髪のロングで毛先にパーマが

かかっている細身の女性

 

せっちゃんは

ベリーショートで金髪

ピンパーマでガタイがいい方

 

『え?何かが違うゆう★

 

萬里は飛び起きた

 

そういえば息子は?!

見ると息子も静かに転がって寝ている

 

見た物の

違和感が凄かったが

見間違いだと思いたい

それを認めたくない気持ち

もしかしたら

施錠してなくて

泥棒もしくは部屋を間違えた人が

入って来たかもしれない

 

せっちゃんを探しに

全部の部屋の扉を開けて

確認して回った

玄関の扉は鍵がかかっている

 

誰もいない・・・

 

((((;゚Д゚)))))))

 

なんだったんだろう・・・と

思いつつも

毎日必死に生きてると

そんなことも

数日経てば忘れていたりもする

 

<リアルタイムブログ・萬里の箱庭>

春はかったるい